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vol.006 劇団費なんて糞食らえ!競馬で儲けろ大作戦!(1998.5)

梅本企画(vol.002参照)の興奮も醒めやらぬまま、我々は淀駅に降り立った。淀駅と言えば、京都競馬場のある所だ。5月24日。その日は高松宮杯が行われる日だった。話は数日前に遡る。今まで公演前以外、劇団費というものが存在しなかった天使のような劇団売込隊ビーム。よくそれで劇団が継続しているなぁ、というくらい劇団員から劇団にお金を払うシステムは存在しなかった。これはもう奇跡と言うほかない。しかし、そんな状況に代表山田かつろうは苦しんでいた。 

 月並みでいいから劇団費が欲しい。ビームの会合で遂にその旨を打ち明けた。皆悩む。(何故悩む?)重い空気の中、(いや、そんなに重くないのだが)宮都がロを開いた。「一人壱万円出して、競馬に賭けようか」「え?ちょっと待て、なんなんだその発想」と思った人がいたかいないかは知らないが、我々はその発言によって活性化された。どんどん話が進む。おい、山田くん、何でおまえまでノリノリなんだ?中谷、清伸といったギャンブル好きはもう目が爛々としている。女性陣は当日弁当を作るとまで言い出し、ついに劇団費は運と天に任せることになった。 

売込隊ビームの照明(当時)、鳥居愛輝。彼はビームきっての天才ギャンブラーだった。どこにいくら賭けるかはすべて彼に託すことに決め、我々は一○万円という大金を競馬につぎ込むことにした。我々のことを無謀と呼んでくれて結構。京都競馬場に到着。その日、鳥居愛輝が出した予想は「5-15/8-15/5-8/8-9」の四点買いだった。ほぼ競馬新聞通り、前評判の高い本命ばかりだったが、今回はそう予想するほか無かったらしい。恨みっこ無しよ。5−15に六万円。8−15に一万五千円。同じく5−8に一万五千円。8−9に五千円。どれが来ても四○万円を超える配分だった。皆気持ちが高ぶり、興奮状態。馬券も買い、弁当を食べ、もう後はこの興奮はその壕にいるものでないと実感できないだろう。何と言っても一○万円を賭けているのだ。スタート!我々は大スクリーンを食い入るように見つめた。十字を切ったり手を組んで拝んだり。自分ら一体何教?とにかく画面では馬が走っている。歓声奇声の雨あられ。もうどの馬が自分たちの賭けた馬かわからなくなった時、馬たちはゴールした。 

結果はどうなったのか?結果は8−1。呆然、唖然、頭真っ白。我々は言葉を失った。一○万円は?劇団費は?どうするの?vol.5の資金は。今は何も考えてはいけない。そんな気がした。帰途。電車は我々を揺らした。硬直した表情は、ヒラパー帰りの家族たちの笑顔とは相反している。梅本企画の成功も忘れ、我々を乗せた電車はゆっくり現実という駅へ連れていってくれた。