vol.005 ビーム日記 「奇勝どんづるぼうの恐怖」 (1998.7)
「奇勝どんづるぼうの恐怖」
それは、先週のビームの会合があった日のこと。それぞれの都合が合わず、集合場所の森ノ宮プラネットホールに集まったのは、小山、宮都、三谷、横山の4人のみだった。vol.5の日程が決まったことなど事務的な話しは30分足らずで終わり、さてどうしようということになった。宮都が「肝だめし行こうや」と言った。特にその後予定の無かった我々はその提案に乗り、恐怖スポットの本がある宮都家に向かった。(中略) 本には「奇勝どんづるぼう」という、なんとも恐怖で間抜けな名前の心霊スポットがあった。「奇勝」もわからないが、「どんづるぼう」はもっとわからない。 場所は奈良で少し遠いが、すぐにそこに行くことに決まった。宮都の知り合いで「どんづるぼう」に行ったことのある人物がいるという。詳しい場所などを聞くため、その人物に電話した。 その内容はこうだ。
・ 芸大近くの太子四つ辻交差点を奈良方面へ進み、線路沿いを行くと道が細くなりだし、習字書きで「どんづるぼう」と書かれた看板がある。 ・ そこにある山を少し登ると、白い岩肌が開けただだっ広い場所に出る。 ・ 同行者が岩と岩の間に滑り落ち、這い上がるのに弱々しく生えた雑草に全体重を預けて脱出した。 ・ 信じられないが、どこからか銃声が聞こえる。
それを聞いた我々の関心は一気に高まり、急いで車を走らせた。(中略) 夜中0時を回ったころ、4人は「どんづるぼう」入り口に着いた。思ったより暗く、怖い。しかも小雨が降っている。 とにかく、我々は電話で聞いたとおりに山を登り、その岩肌を目指した。 到着。 すごい。空は曇っているのに、白い岩のおかげで視界はかなり明るい。そこではあまり恐怖を感じなかった。 横山が言う。「ほんとに銃声聞こえるかどうか、静かにしてみよう」 しーん。 その瞬間。 「パーン!」 「え?」・・・・少し開けて、「パーン!・・・・・パーン!」 銃声?これには本当にびっくりした。人一倍大袈裟なリアクションが取れる小山はかなりいい表情をしていた。 ただ一人驚いていない島根県出身の三谷は「田舎では畑に鳥が来ないように空砲鳴らすんだよ」とあっけらかんと言い放った。「でも、こんな夜中に?」「・・・・・・」 三谷の説明で充分解明された(?)銃声だが、我々は無理矢理にでも霊体験と信じたい。 ちなみに「どんづるぼう」は、溶岩の影響で、珍しい地形に形成された峰のことらしい。 この日の事件はここからが本番だっだ。
どんづるぼう探索を終え、「時間もあるし、自分たちで心霊スポットを捜そう」ということになり、我々は車を走らせた。奈良の田舎道。道は広いが、両側は田んぼが続く。運転していた横山は、急にハンドルを切り、神社の見える方向を目指した。 細い民家を進む。「おお、いい感じの道やなぁ」と宮都も言う。 もうどこをどう来たかわからなくなった頃、車は田んぼ道に出ていた。これ以上進んでも無理だな、と思い、ギアをバックに入れてUターンする事にした。 宮都「田んぼ道やし、暗いから気を付けてや。道真っ直ぐちゃうで、落ちんといてや」 横山「うん」 次の瞬間、 「ガコっ!」 ・・・・・・・・。 言ってる側から右側後輪が田んぼに落ちた。 アクセルを踏む。「ウィーン、ウィーン」と虚しい空回りの音。 外に出てみると、一面闇で、雨足はかなり強まっていた。 「どうしよう?」 ジャッキは積んでないし、JAFを呼ぶにも自分たちの居場所がわからない。夜中の2時、その辺の近所に助けを呼ぶわけにはいかない。 4人で持ち上げてみる。ほとんど動かない。タイヤに板を挟みアクセルを踏む。しかし、上手く噛み合わず、タイヤの焦げる臭い。(中略) 30分以上も雨の中、我々は試行錯誤を繰り返した。 小山は「こりゃ朝までかかるな」と覚悟していたらしい。 様々な策を練っているうち、やっと「さっき挟んだ板とタイヤの間に石を噛ませて、乗り越えさせる」という、魅力的な作戦が決まった。 早速取り掛かる。 見事、その作戦は大成功。車は田んぼからやっとの思いで抜け出したのだ。
4人で握手が交わされる。もう手も足もドロドロだ。何なんだろう、この光景は。 いつしか、どんづるぼうの出来事はすべて吹っ飛んでしまった。 皆の疲労感はピークに達し、特に脱輪させた張本人の横山は精神的に疲労し、もう後は家路を急ぐだけであった。 どんづるぼうで、岩と岩の間に落ちた人がいた。我々は車が田んぼに落ちた。 どんづるぼうという場所は、訪れた人に何らかの「落ち」を体験させる、恐怖の心霊スポットなのだろうと、我々の中で落ちが付いた。
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